ご不幸にも近親者がお亡くなりになられて、その方の遺産を整理・相続をしなければならない場面においては、「どのように手続を進めていけば良いのかわからない」「自分たちだけでは手続きが難しい」といった状況に陥ることがあります。多くの方が、一生に一度は経験する可能性の高い「お困りごと」のひとつなのではないでしょうか。
今回は、遺産整理で必要とされる作業のうち、「財産調査前に有無と把握をしておきたいもの」「財産調査」「各種財産の名義変更手続き」について、掘り下げてゆきたいと思います。

財産調査前に有無と把握をしておきたいもの

遺言書(あれば開封せずに、家庭裁判所への検認申立てが必要)
・固定資産税納税通知書(物件明細が載っているもの)
・不動産権利書(あれば)
・故人名義の預金通帳
・株式がある場合は取引残高報告書など
 →保有資産の内容や金額がわかる書類
・生命保険の証券
・自動車
・債権
・負債

 <相続登記の義務化について>
 相続が発生した場合、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務付けられています。
 ※2024年4月1日からの施行・義務化ですが、過去に発生した相続についても遡及適用されることから、相続登記が未了の不動産についても、3年以内(2027年3月31日まで)に登記を 終えることが義務付けられています。

「財産調査」をすすめてゆく

「不動産」
被相続人の所有不動産を全て洗い出すために、名寄帳と評価証明書を取得して、所有物件のリストアップをしてゆきます。基本的には名寄帳のみですべての所有不動産が出てくるはずなのですが、課税台帳から漏れている物件については出てこないこともあるため、評価証明書と照らし合わせた上、権利書等があればそれも活用して、全ての物件を洗い出ししてゆくようにします。
洗い出した物件のひとつひとつについて、登記簿謄本(登記情報)、公図(地番図)等を確認して特定をしてゆきます。

「預金」
・通帳がある場合は、まず記帳を済ませます。通帳の中身を確認して、生命保険の引落しや生前贈与の形跡がわかったりすることがあります。
・被相続人の死亡日現在の預金残高・生前の取引内容の全ての状況を確認するため。各銀行から残高証明書を取得します。基本的にはどこの支店でも取得可能で、支店間で取り次いでくれます。直接窓口での手続きが原則ですが、郵送で対応してくれる金融機関もあります。

 <口座の凍結について>
 残高証明の請求など、銀行に口座名義人の死亡を連絡すると口座が凍結されます。振込も引き出しもできなくなる ので収益物件(振込)がある場合などには、段取りを確認しながら進めなければならないケースもあるため、注意が必要です。
 →例えば、被相続人がアパートの大家さんであった場合、口座凍結されてしまうと賃借人が家賃振込できなくなってしまうことがあります。

「株式」
・証券会社から定期的に送られてくる、取引残高報告書、配当金の通知書、株主総会の案内通知などで、銘柄とおおよその金額を確認します。
→洗い出し後、証券会社または信託銀行から、残高証明書を取得します。

 <証券保管振替機構 “ほふり” について>
 登録済加入者情報の開示請求ができます。株主が株式等に係る口座を開設している証券会社、信託銀行等の名称及び登録内容(住所・氏名等)を確認することができます。
 →確認に一カ月以上かかるのですが、加入者情報の有無のみ確認できるのであって、具体的な保有金額、残高までが開示されるものではありません。手間と費用もかかってしまうた め、被相続人の財産状況について「何もわからない場合」の確認手段として、照会をかけることが通常です。

「保険」
・基本は証券を確認して保険会社に連絡します。保険金支払い後に各保険会社より受取人に対して明細が送られてくるので、それを参考に受取金額を確認します。
・税申告が絡む際は、場合によっては死亡日現在の解約返戻金相当額の証明書を請求しなければならないケースがあります。
・どこの保険会社か全く不明な場合は、生命保険契約照会制度を利用して調査することができます。保険会社までは判明するので、その後は個別に照会をかけてゆきます。

各種財産の名義変更手続き

遺産分割協議の成立後、「遺産分割協議書」を作成して、各種財産の名義変更・解約手続きをすすめてゆきます。
各種手続きにおいて、「相続手続き依頼書」へ相続人全員の署名押印(実印)があれば、「遺産分割協議書」の添付は必須ではないのですが「誰が・何を・どのくらいの価額・残高を」取得するのかを協議書に記載しておき、そこに相続人全員の署名押印があれば後日の紛争予防にもなるので、基本的には「遺産分割協議書」は作成しておくべきしょう。

「不動産」
法務局に登記申請することになるため、司法書士に以下のものを引き渡して依頼します。
・相続人特定に必要な戸籍一式(または法定相続情報)
・相続関係説明図(相関図)
・評価証明書(提出時における「最新年度のもの」になります)
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
・相続人全員の身分証明書の写し(本人確認用)

「銀行関係」
・相続人特定に必要な戸籍一式(または法定相続情報)
・相続関係説明図(相関図)
 →なくてもいいですが、あった方が行員に説明しやすい
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
上記を添付書類として、各銀行所定の様式の手続き依頼書にて手続きをする。

「証券会社」
基本的には銀行と同じです。
株式の相続は、株式を相続人名義へ変更する「移管手続き」にします。相続人がその証券会社の口座を保有する必要がでてくるため、事前の準備が必要になります。

「自動車」
①乗用車は、下記書類を添付して管轄の運輸支局で手続きします。
被相続人と同一住所の相続人への名義へ変更するのでなければ、名義変更前に車庫証明の申請が必要になります。
・車検証の原本
 →所有権留保が付いている場合には、別途手続きが必要になるため事前注意が必要です。
・除籍謄本(法定相続情報でも可)
・取得者の印鑑証明書
・遺産分割協議書

②軽自動車は、下記書類を添付して管轄の軽自動車検査協会で手続きします。
取得者の使用の本拠が位置変更となる場合には、ナンバープレートの変更も伴いますので、事前の確認が必要です。
・車検証の原本
・除籍謄本(コピーでOK、法定相続情報でも可)
・取得者の印鑑(認印でOK)
・取得者の住民票又は印鑑証明書
(以下は、ナンバープレートの変更が伴うときに追加)
・ナンバープレート前後2枚(旧ナンバーを外して持ってゆく)
・新ナンバープレートの代金(1,900円ほど/2025年3月現在)

「農地(ある場合)の相続届」
届出書は、基本的には自治体(農業委員会)ごとに用意してある場合が多い。
添付書類は、名義変更後の登記事項証明書などを必要とする自治体がありますが、自治体ごとに異なるため確認が必要になります。

 <土地改良区の組合員資格得喪通知書>
 相続した農地が土地改良区の受益地になっている場合に必要です。どこの土地改良区の管轄になっているのかは、農業委員会に確認します。

「森林(あれば)の土地の所有者届出」
全ての山林(森林)が対象ではなく、都道府県が策定する地域森林計画の対象となっている森林が届出の対象となる。対象かどうかは、自治体の林業課等に確認します。
添付書類は、登記事項証明書などが一般的ですが、自治体ごとに異なるため確認が必要になります。

「固定資産税納税義務者(所有者)変更届」
「未登記家屋」が対象になります。
既登記物件は相続登記により自動的に固定資産税の納税義務者の名義が変わりますが、「未登記物件」である場合には、この届出が必要になります。
添付書類としては、相続人確定の戸籍一式・遺産分割協議書・印鑑証明書などになりますが、自治体ごとに異なるため確認が必要になります。

行政書士にお任せするのが合理的

遺産相続の手続は、相続者(ご相談者)ご自身でも日常生活の合間で行うことはできますが、時間と手数の負担は決して軽くはなく、例えば平日にお勤めの代表相続人の方が手続執行者となることは、かなり非合理的です。相続人が多かったり、親類縁者との関係が希薄・疎遠であったり、被相続人の住所地から遠方にお住まいの方がいらっしゃるが故に手続が滞るなど、完了までのハードルが非常に高くなってしまうことも少なくありません。また、不慣れな手続きと専門的な作業も多くあるため、仮に相続人であるべき縁故者の一人を誤って省いてしまうといった失敗を犯してしまうと、その後のご親族間の信頼関係に影を落としてしまうことにも繋がりかねません。
実質は、行政書士にお任せするほうが、費用対効果の面でも、かなり合理的なのです。ただし、相続人間で案件特有の紛争等が生じてしまった場合には、行政書士がお手伝いできる範囲が大きく制限されるため、受任すること自体が実質的に困難になります。お困りごと、ご心配ごとがございましたら、トラブルになる前に、お近くの行政書士にご相談ください。(状況によっては、弁護士の紹介でご対応させていただくことはあります。)

遺産相続に関するお困りごとにつきましては、まず当事務所にご連絡ください。
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