建設業者は毎事業年度終了後の4カ月以内に、建設業決算報告書を作成して提出しなければなりません。今回はその財務諸表の内、「建設業会計の損益計算書」についてフォーカスしてみたいと思います。
「損益計算書」とは
ある会計期間における企業の「収益(売上など)」と「費用(コストなど)」を対比させ、その差額として利益または損失を示す決算書です。英語ではProfit and Loss Statementと呼ばれ、略して「P/L」とも呼ばれます。決算期に作成が義務付けられており、企業の経営成績を把握するために不可欠な書類です。
建設業会計の損益計算書の記載概要
収益と費用等を上からの流れで順に計算してゆくと、
「A:売上総利益(売上総損失)」
「B:営業利益(営業損失)」
「C:経常利益(経常損失)」
「D:税引前当期純利益(税引前当期純損失)」
「E:当期純利益(当期純損益)」
をそれぞれ算出できる計算書になります。
Ⅰ.売上高 及び Ⅱ.売上原価
(Ⅰ.売上高)
・「完成工事高」
・「兼業事業売上高」
→建設業を主業とする事業者が、建設業以外の事業(不動産売買、資材販売、管理業務など)から得る売上高を指します。建設業会計では、「完成工事高」とは別に、明確に区分して計上することが義務付けられています。
(Ⅱ.売上原価)
・「完成工事原価」
・「兼業事業売上原価」
→建設業者が本業の建設事業とは別に営む事業(例:不動産売買、資材販売など)で、その事業の売上高に対応する「仕入原価や製造にかかったコスト」を指します。
以上から「売上総利益(売上総損失)」を求めることができます。
「売上総利益(売上総利益)」とは、売上高から売上原価を差し引いた利益のことで、「粗利」や「粗利益」とも呼ばれます。
関係式:「A:売上総利益(売上総損失)」=「Ⅰ.売上高」-「Ⅱ.売上原価」
Ⅲ.販売費及び一般管理費
税務申告書の「販売費及び一般管理費内訳書」のうち、営業・管理・事務部門にかかる費用を計上します。
→「役員報酬」「従業員給料手当」「法定福利費」「福利厚生費」は、営業・管理・事務部門の役員・従業員の報酬・給料(賞与)・法定福利費・福利厚生費のみを記載します。
建設工事にかかるものは、完成工事原価へ振り替えして、兼業事業にかかるものは、兼業事業売上原価へ振り替えをします。
以上から「営業利益(営業損失)」を求めることができます。
「営業利益(営業損失)」とは、企業が本業の活動で稼いだ利益のことで、売上高から売上原価と販売費および一般管理費を差し引いて計算されます。マイナスの場合は「営業赤字(営業損失)」となります。
関係式:「B:営業利益(営業損失)」=「A:売上総利益(売上総損失)」-「Ⅲ.販売費及び一般管理費」
Ⅳ.営業外収益 及び Ⅴ.営業外費用
(営業外収益)
「受取利息及び配当金」「貸倒引当金戻入額」「雑収入」など
 →「貸倒引当金戻入額」とは、過去に見積もって計上した貸倒引当金が、不要になった場合、または見積額よりも少なかった場合に、その分を戻し入れ、収益として計上する勘定科目です。
(営業外費用)
「支払利息」「貸倒引当金繰入額」「貸倒損失」「雑損失」など
 →「貸倒引当金繰入額」とは、将来発生する可能性のある貸倒れに備えて、売掛金などの金銭債権について見積もった損失額のことです。
 →「貸倒損失」とは、売掛金や貸付金などの金銭債権が、何らかの理由で回収できなくなった場合に、その金額を会計上計上することです。
以上から「経常利益(経常損失)」を求めることができます。
「経常利益(経常損失)」とは、企業が通常行っている事業活動(本業、兼業、金融取引、投資など)から得られる利益のことです。
関係式:「C:経常利益(経常損失)」=「B:営業利益(営業損失)」+「Ⅳ.営業外収益」-「Ⅴ.営業外費用」
Ⅵ.特別利益 及び Ⅶ.特別損失
(特別利益)
「前期損益修正益」「固定資産売却益」「貸倒引当金戻入額」「保険金収入」など
 →「前期損益修正益」とは、前期以前の決算時に発生した収益の誤りや経理の過誤などを、当期で修正する際に使用される勘定科目です。
(特別損失)
「前期損益修正損」「固定資産売却損」「固定資産除却損」「貸倒引当金繰入額」「貸倒損失」など
 →「前期損益修正損」とは、前期(前年度)以前の決算で発生した経費の計上漏れなど、すでに確定した損益の誤りが当期に判明し、その損失を当期分で処理する際に使用する勘定科目です。
以上から「税引前当期純利益(税引前当期純損失)」を求めることができます。
「税引前当期純利益(税引前当期純損失)」とは、法人税などの計算基準となる数字であり、税金を支払う前の段階の企業利益を表します。
関係式:「D:税引前当期純利益(税引前当期純損失)」=「C:経常利益(経常損失)」+「Ⅵ.特別利益」-「Ⅶ.特別損失」
そして、「法人税」「住民税及び事業税」などの税金を加減すると「当期純利益(当期純損益)」を求めることができます。
関係式:「E:当期純利益(当期純損益)」=「D:税引前当期純利益(税引前当期純損失)」-「税額合計」
建設業財務諸表作成上の注意点
建設業決算報告書においては、建設業法・建設業法施行規則・国交省告示により、独自の財務諸表の様式、勘定項目などが定められており、税務申告書に付属の決算報告書とは異なっています。したがって、税務申告時に税務署へ提出した決算報告書を許可行政庁(国交省大臣もしくは都道府県知事)に提出しても認められないことになります。
「建設業許可」「経営事項審査」などでもすべての財務諸表の提出が求められますが、その際には全てこの様式に従ったものでなければなりません。
行政書士は、建設業許可申請をはじめとする許可更新・事業報告のある許認可業務をはじめ、今回フォーカスした建設業決算報告書の作成を見越した会計記帳など、煩雑な書類作成事務の継続的アウトソーシングを承れる専門家です。ほかの様々な法律における専門分野についても、事業経営の状態・状況を客観的に評価しながら丁寧に帆走できる強力な存在になります。
建設業決算報告書の作成でお悩みの方は、お気軽に当事務所にご連絡ください。
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