建設業者は毎事業年度終了後の4カ月以内に、建設業決算報告書を作成して提出しなければなりません。今回はその財務諸表の内、「賃借対照表」についてフォーカスしてみたいと思います。

「賃借対照表」とは

決算時における企業の財政状態(資金の調達と運用)を表した報告書になります。「バランスシート」と呼ばれることもありますが、表す中身は同じ項目と内容になります。

「賃借対照表」は、以下のような表になります。

賃借対照表
 資産(資金の運用) 負債(他社からの資金調達)
・流動資産
 (現金・預金・売掛金・棚卸資産(在庫)など)

・固定資産
 (土地・建物・機械・工具器具・ソフトウェア・
 長期前払費用・保険積立金など)

・繰延資産
 (創立費・開業費・開発費・株式交付費・
 社債等発行費)
・流動負債
 (買掛金、支払手形・未払金・
 工事未払金・未成工事受入金
・固定負債
 (長期借入金・社債・長期未払金など)
 純資産(自社による資金調達)
・資本
 (資本金・利益準備金・利益余剰金など)

表の見方としては、
①資産(左列):資産を、会社がどのような形で保有しているのか
②総資本(右列):資金を、会社がどのように調達しているのか(「負債」+「純資本」)
を表した財務諸表になります。
帳票の数字上は「①(左列)=②(右列)」になります。これが「バランスシート」とも呼ばれる所以になります。
注意点としては、「負債(流動負債、固定負債)も資本に含まれる」ということを理解して作表しなければ、左右の数字が合わなくなってしまうということが生じます。
もちろん、正しく作表できなければ、財務状況を正確に読み解きすることができません。

賃借対照表の記載概要(①資産)

・「流動資産」
短期間で現金化できる流動性の高い資産のことを指します。具体的には「一年以内に現金化される資産」を指します。
「現金・預金・売掛金、受取手形・棚卸資産(在庫)」などが該当します。
建設業での会計処理としては「完成工事未収入金」「未成工事支出金」などが、この項目に含まれます。

・「固定資産」
継続的な使用などの目的で「長期間保有する資産」のことで、代表的なものに土地や建物、機械設備などが挙げられます。

(1)有形固定資産
「建物・構築物」「機会・運搬具」「工具器具・備品」「土地」「リース資産」ほか「一括償却遺産」などが該当します。
基本的に固定資産を取得した場合には減価償却を行っていることが多いと思われますが、さらに旧定額法もしくは  定額法で減価償却を行っている場合には、確定申告時に作成・添付の「別表16」の参照記載が必要になります。
(2)無形固定資産
形がなく、目に見えない(視認できない)固定資産を指します。「特許権」「ソフトウェア」「電話加入権」など。
(3)投資その他の資産
「投資有価証券」「長期前払費用」「保険積立金」「出資金」「敷金」「預託金」など

・「繰延資産」
支出した効果が、1年以上にわたって将来に発現すると期待される費用を資産としたものになります。会社設立時や開業準備のための費用、開発費など、長期にわたる事業活動に貢献する支出を指し、「創立費」「開業費」「開発費」「株式交付費」「社債等発行費」となり、建設業法ではこの5つで限定されています。

賃借対照表の記載概要(②総資本「負債」)

・「流動負債」
営業活動によって発生する短期的な負債を指します。具体的には「支払期限が決算日から1年以内の負債」のことを指します。
「買掛金、支払手形」「未払金」「短期借入金」「未払費用」などが該当します。
建設業での会計処理としては「工事未払金」「未成工事受入金」などが、この項目に含まれます。

・「固定負債」
支払期限が貸借対照表の作成日から1年を超えるものを指します。具体例として、「長期借入金」「社債」「長期未払金」などが挙げられます。

賃借対照表の記載概要(②総資本「純資産」)

・「株式資本」
「新株式申込証拠金」「自己株式」「資本金」「資本剰余金(含:資本準備金)」「利益剰余金(含:利益準備金、任意積立金)」「繰越利益剰余金(※)」など
 →※「繰越利益剰余金」とは、「利益剰余金」のうち「利益準備金」「任意積立金」以外の金額のことで、会社創業以来の毎年の利益(損失)のうち、配当等で処分しないで繰り越されてきた利益(損失)の累計額を指します。

・「評価・換算差額」
「その他有価証券評価差額金」「繰延ヘッジ損益」「土地再評価差額金」など

・「新株予約券」

建設業財務諸表作成上の注意点

建設業決算報告書においては、建設業法・建設業法施行規則・国交省告示により、独自の財務諸表の様式、勘定項目などが定められており、税務申告書に付属の決算報告書とは異なっています。したがって、税務申告時に税務署へ提出した決算報告書を許可行政庁(国交省大臣もしくは都道府県知事)に提出しても認められないことになります。
「建設業許可」「経営事項審査」などでもすべての財務諸表の提出が求められますが、その際には全てこの様式に従ったものでなければなりません。

行政書士は、建設業許可申請をはじめとする許可更新・事業報告のある許認可業務をはじめ、今回フォーカスした建設業決算報告書の作成を見越した会計記帳など、煩雑な書類作成事務の継続的アウトソーシングを承れる専門家です。ほかの様々な法律における専門分野についても、事業経営の状態・状況を客観的に評価しながら丁寧に帆走できる強力な存在になります。

建設業決算報告書の作成でお悩みの方は、お気軽に当事務所にご連絡ください。
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